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仕事ものがたり

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賞味期限の切れた弁当を食べた夜のこと。

藤井は大学を卒業して就職したのは証券会社だった。その会社の倒産劇の後に選んだのは損害保険会社。世界的に評価の高い企業ではあったが、営業職の数字との戦いは非常に厳しかった。藤井は売れなかったわけではない、いや、むしろ営業成績は常にトップクラスで年収もうなぎ上りだった。営業マンは数多くいたが、その中のわずか2割ほどの“売れている営業マン”のおかげで、残りの8割の分まで補っているというような状況だった。藤井はその2割に入っていたわけだが、8割の営業マンたちが日々疲弊していく姿を見て、心がせつなくなったという。その会社はフルコミッションだったため、売れていない営業マンは当然ながら身入りもない。

ある夜のこと、同僚の自宅に藤井が寄ったことがあった。同僚の奥さんは、コンビニでバイトをして家計を助けており、ちょうど期限切れになったコンビニ弁当を家族のためにもらい受けてきた時だった。藤井もその弁当をもらって一緒に食べたのだという。つらそうにしている同僚の顔を見た時、「このまま競争社会に身を置くのはやめよう」と思った。そして退職後、自分探しの旅に出るのである。