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母にビンタをされた日のこと

藤井の両親は、事情があって藤井が生まれた直後に離婚をしている。そのため藤井は父という存在がどんなものなのかを知らないという。父は地元では知らない人がいないほどの豪族の家柄で、会社をいくつも経営していた。母と別れた後に再婚し、子供にも恵まれて家庭生活を営んでいた。が、バブル経済崩壊の余波もあって父が経営していた会社がうまくいかなくなり、やがて倒産することに。その時すでにビジネスマンとして成功していた藤井のもとに、父がやってくる。大人になってはじめて会った父だったが、それはお金の無心だった。藤井は父の申し出を断り、それを母に報告すると、母はなにも言わずに藤井の頬をビンタしたという。「あんたをそんな無情な人間に育てた覚えはない」と。妻の前で母親にビンタされた藤井は複雑な気持ちになりながらも、改めて母の人間としての強さを実感したという。その後、援助を続けた父は鬼籍に入った。母にぶたれた時の痛みを忘れることなく、“人のためになる”仕事をすることで、父への気持ちに整理をつけようと思っている。