シークエンス

シー・クエンス
仕事ものがたり

写真

黒子としての視点は、アートを見る視点もつい裏を‥‥

陶芸家・中村公之氏との交流については、以前ここのコラムでも紹介している。陶芸と土地、まったく別の分野で仕事をしている同士ではあるが、土を相手にしているという点で共通項を感じたということを書いている。取材陣にその中村氏の作品を見せてくれた時、藤井は面白いことを言い出した。

「この作品の表ではなく、裏も見て欲しいんです」といって、作品を裏返したのである。表に見える表情とは確かに違う作品となって、そこには別の表情が浮かび上がっていた。シー・クエンスが入っているビルの窓辺で、眼下にグリーンベルトを見晴らしながらだったからか、中村氏の作品には物語性を帯びているようにも見えた。

「もちろん表側から見て素晴らしい作品だと思ってはいるのですが、黒子であるという仕事柄、表舞台にはでてこない裏側が気になってしまって。ある日、この作品を裏返して眺めてみたところ、なんとも言えず良いんです。こんなことをいうと作者に叱られてしまいそうですが」と語ってくれた。

中村氏の作品の裏をどう見るか、はまた別の問題としても、裏が気になる、裏を見たいという視点は、やはり黒子であるべきと自分に課した考え方を象徴していると言っていいだろう。