藤井の生まれ故郷である山口県は、「壇ノ浦の戦い」と「幕末の志士」が歴史の教科書に必ず登場する。では、中部地域はどうだろう。天下をとった三英傑は中部地域である。天下分け目の戦の場所も多く、歴史好きにとってはドキドキするような土地の名前がたくさんある。歴史の側面だけで見ても、数えきれないほどのエピソードがあるのだ。尾張徳川家の武家文化が現代の生活や文化に色濃く残っていることも大きな特徴のひとつだ。この地域の魅力は語り尽くせないほどあるのに、それをうまくPRできていないのではないか、もっとお国自慢をしてもいいのではないかと藤井は思っている。

そして土地と向かい合う時、藤井はこうした文化的な視点で考えるようにしている。この土地ではどんな歴史が刻まれ、どんな変化を遂げて、どんな人が住み継いできたのだろう、と。たとえそれが奥深い山の中だったとしても、その山が人々にどんな恵みをもたらしたのだろう、と考える。そうして長い年月で育まれてきた土地の力を、次の世代へとバトンタッチさせるための下準備を、シー・クエンスがしているのだ、と思っている。いずれ住む人たちが、お国自慢をしてくれる日が来ることを願って。