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祖母の懐には何が入っていたか

愛知県瀬戸市の大型プロジェクトが先日無事に着工した。このコラムに何度か書き連ねてきている祖母懐小学校跡地のプロジェクトである。先日、瀬戸市の某所で、祖母懐という言葉のルーツについてお尋ねしてきたところ、陶器の街らしい逸話を教えていただいた。その話によると、鎌倉時代に瀬戸の陶祖となったある人物が、自分の祖母に、自分はこの場所で陶器をつくることを生業にしてやっていきたいと考えていると話したのだそうだ。そして良い土がとれると言われている瀬戸の街のどこに行けば、自分が目指す陶器に見合った土がとれるのだろうか?と問うたところ、その祖母は自分の着物の懐から土が入った袋を出し、これでまずは器をつくれ、と言ったのだとか。祖母の懐とは、その意味である、という一説があるのだそうだ。もしかすると他の説も調べれば出てくるかもしれないが、祖母の懐から土が出てきたという話は、いかにもせとものの街らしくて、微笑ましい。どんな謂れがこれから出てくるかわからないが、いずれにしても、祖母が、親が、子を想う気持ちが地名になったのは間違いがなさそうだ。