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おいしい土とはなにか、良い土地とはなにか

藤井はこの大地を預かると決めた瞬間、その土地の土を口に含んでみる、という話は以前にこのコラムでも紹介した。それは藤井の決意表明であり、土地に対して責任を持ってやりますと宣言することでもあり、儀式のひとつのようになっている。「実際に口に含んで、おいしい土というのがあるんです」と藤井。「この土はおいしいな、と思えるということは、良い土地である証拠」と不思議なことを口にする。

つまり、樹木を中心とした自然のものが大地に還った土は、自然の味がするのでおいしいのだという。逆に人工的なものが混じったり、ケミカルな香りがする土は、明らかに人の手で汚されてしまった土地なのだと。土の味を言葉で説明することは難しいが、実際に何百という土地の土を口に含んできた藤井ならではの感覚なのだろう。

土を食べるなどと聞くと一瞬まゆをひそめる人がいるかもしれないが、その大地での暮らしを想像することと同じく、藤井にとってはとても大切な大地と向き合う工程なのである。