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仕事ものがたり

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億を超える年収があっても、心満たされなかった。

藤井は、大学を卒業して就職した証券会社が倒産し、その後は損害保険会社の営業職に転職した。その会社では着実に成果を上げ、入社して10年でトップセールスマンへと登っていった。フルコミッション制だったので、営業成績とともに年収もうなぎ登りにあがっていく。最高額の年収は億を軽く超えていた。いわゆるスーパーサラリーマンである。子供のころ母と二人でつましく暮らしていた藤井にとって、それは充分に成功した人生といえるだろう。周りからはうらやましがられ、もてはやされた。

しかし藤井は心を満たされてはいなかった。営業成績がふるわず、精神を病んでいく仲間が近くにいる。月に一度はある葬儀に出ると、時に悲壮な場面に遭遇する。数字だけを追い求めている自分に、藤井は自問自答したという。このまま続けていくことが自分の生き方なのか、と。1位を目指して競争し続けることが人生でいいのか、と。そんな時にゆみちゃんの短冊に偶然出会い、一瞬で心を奪われたのであった。